20190204八ヶ岳/小同心 |
2019/2/4-5 メンバー:内田(B4),王鞍(B3)記 お久しぶりです、王鞍です。 右足を折って半年以上山を離れていましたが、先週の涸沢岳西尾根でとりあえずの仮の復帰を果たしました。以下は小同心右稜から小同心クラックのブログです。計画では4日に小同心、5日に無名峰南稜と赤岳ショルダー右リッジを登る予定でしたが結果的に小同心のみとなりました。力不足を大いに感じた山行でしたが、同時に改善できる点を多く見つけることができました。少し長いですがお付き合いください。 2/4 美濃戸口0630-0910赤岳鉱泉1000-1100右稜取付き-1450小同心クラック取付き-1800左岩峰頂上---2200大同心稜-2330赤岳鉱泉 中央道を小淵沢ICに向かうにつれて雨脚が強まる。日本海低気圧に伴う寒冷前線がちょうど上空を通過していた。冬山というより春山に行くような気分だけれど、雨雲の中のアプローチも悪くない。それでも冬が終わってしまったような気がして少し寂しい。チェーンを装着し美濃戸口を少し過ぎた林道脇に駐車。雨は上がっていたが気温は高く、林道の雪はスラッシュ状でグズグズしている。二人だとちょっと荷物が重く、この時点で足が少し痛む。2時間半かけて9時ごろ赤岳鉱泉に着きテント設営。うっちーは林道の良いショートカットと悪いショートカットを知り尽くしていた。パッキングが雑で時間がかかり10時頃出発。5分ほどトレースを辿り橋を渡ってすぐ左手の沢沿いに入る。うっちーがいなかったら全くわからなかったが、これが柳川右俣らしい。沢はすぐに分岐し、左は小同心ルンゼ、右は三叉峰ルンゼに通ずる。小同心右稜の取付きは小同心ルンゼを詰めるが、川幅があるため少し右俣側を上がってから左にトラバースし無名峰南稜の末端を越えて小同心ルンゼに入る。ルンゼ内を歩くとボゴッという音と共に四方の雪面が沈んだ。ここ数日の気温上昇で積雪の表面がクラストし内部は腐り、雪崩地形に入ればすぐに全層雪崩が起きるような感じで恐ろしい。この雪ではラッセルもまたいやらしく、ピッケルで崩すには固く乗り込むには脆く、嵌ると引き抜き難い。足を抜くときにゲイターが引きずり下ろさるのも煩わしい。一息ついて見上げると空が少し開けて荒々しい岩肌が覗いていた。 右にルンゼを見ながら登ると左手の尾根に岩壁が現れ、その右脇を登り尾根上に出る。小同心右稜に乗ったようだ。やはりあまり人が入っていないようで、トレースは無く藪がうるさい。登りやすいルートを選択しながらトレースを刻んでいく。涸沢岳西尾根をラッセルしている時にも感じたことだけど、人の入らないルートでは的確なライン取りをしてきれいなトレースが刻む喜びがある。計画時のルート選択をマクロなラインとするとこれはミクロなルート取りで、木々や地形の小さな起伏を見ながら数歩先のルートを選んでいくことを繰り返す。その小さなラインにも個性が出て面白い。いつかマクロなスケールでオリジナルのきれいなラインを引けたら素敵だろうなどととりとめもないことを考えながら進む。僕らが登るにつれて雲が道を開くように退いていき、唐突に木々の間から巨大な大同心が現れた。 12時ごろに岩壁が現れ、ここでアイゼンに変えたが、少しリッジを外れると腰まで埋まる。すぐ先に小同心の美しいクラックが見えたが、シラビソと葉を丸めたシャクナゲの作る空洞に苦しめられ次の岩壁まで1時間以上かかってしまった。ここはロープを出して抜けるが、岩には薄氷が張り草付きにアックスは刺さらず中々悪い。そしてあろうことか僕は何かの拍子でテント内に確保器を落としてしまったため腰がらみで確保。おかげでのちの懸垂でも苦労することになる。そこから再び雪稜。 ![]() 白く凍ったダケカンバ(かな?)と碧い空に小同心が聳え、きついラッセルにもかかわらず天国にいるかのような錯覚を覚えた。 小同心クラック取付き手前 小同心正面に着いたのは15時前となった。眼の前には顕著な凹角が続き、小同心稜からこのクラックを一本のラインと見るとラッセルをしてきた価値は十二分にある。時間は押していたがホールドは豊富に見えたので登攀開始。1p目は王鞍。が、想像以上に悪く時間がかかる。ホールドに見えた岩はエビの尻尾に覆われうまく掴めず、アックスも乗らない。支点も取りづらく、チムニームーブで慎重に登っていく。記録を見るとボルトなどもあったらしいが氷で何も見つからなかった。 ![]() 1p目 1時間ほど掛けた後ピッチを切り、つるべでうっちーと交代。自分が慣れていないために難しく感じたのだと思っていたが、うっちーも苦戦している。ここでのビレーで僕は身体を冷やしてしまった。登攀自体も際どいもので精神的にも削られていく。結局2p目も1時間ほどかかり、最終ピッチで小同心の頭に立ったときには陽が沈もうとしていた。 ここで懸垂を選択するが、この判断が良くなかった。本来は大同心ルンゼにしろ硫黄岳経由にしろ頭から稜線上を進み主稜線に出るのが正解だが、日が沈み雲も出てきて、さらに主稜線では強風が予想されたため横岳へは進もうと思えなかった。そして僕は寒さと暗さで冷静さを失っていた。懸垂下降した先からトラバースで小さなリッジに出て、ここで風が弱まりやっとダウンを着込む。見上げると満天の星空があり、落ち着きを取り戻す。うっちーがロープを伸ばして下降可能なルートを探りながらクライムダウンしていく。闇夜でも星の明かりか、地形はある程度見えた。やがて大同心取付きから小同心へのトラバースルートが現れ懸垂下降。そのまま大同心稜を黙々と降り、赤岳鉱泉に着いたのは23時半だった。言葉少なに鍋を作り、全てのことを明朝に見送って1時半に就寝した。前日の朝起きてからちょうど24時間が経っていた。 2/5 自衛隊の号令で目が覚めるとテント内は明るく、時間は9時を回っていた。山でこんなにぐっすり寝たのは初めてだが、それでも疲労が全身を覆っている。時間的にショルダーをやるかという話も出たが前日のコンディションを考えるとまた日が暮れそうだったし、もはや登る気力は残って無かった。敗残兵の気分で緩慢なうごきで朝飯をかき込み、美濃戸周辺でアイスでもやって帰ろうということにしたが、降るだけで身体がきしむ。酷使した右足首はただの下山もきつく、結局アイスも無しでそのまま帰路に着いた。清々しいほど快晴なのが余計に悔しい。小同心、無名峰、赤岳ショルダーを一つの流れとして計画を立てた以上、これは完全な敗北だった。 今回は多くの反省点があるが、結局のところ小同心を入門ルートと侮っていたことに尽きると思う。ルートを楽しむためといって情報を十分に集めなかった。特に下降ルートなどは入念に調べるべきだし、それはルート本来の魅力を減ずることには全くならないはずだ。それから夕暮れが近づいた時点で往路を戻るべきだった。これもまた小同心で敗退するわけにはいかないという意識が働いていたように思える。そもそもタイムリミットを設定するという発想自体が抜けていた。ここ数日気温が上昇し予想外のコンディションに阻まれるようなことは容易に想定できたはずだった。全てはルートを侮り、自分の能力を過信していたことにある。 また、個人的に僕には精神力が足りていないと痛感した。精神力というと瞑想や滝行でもして鍛えるのかと思われるかもしれないけど(それもありだけど)、そうではなく精神を安定させる力のことで、事前の準備と基本的な事を確実に行うことがそれに当たると思う。今回で言えば、天候は安定しているのを知っていたのだから夜間行動になる場合をしっかり想定してシュミレートしていれば焦らず冷静な判断ができたはずだし、ビレー点で防寒着を着るだとか支点をより確実に取る等の細かい作業を怠らないことで心身の状態は安定したと思う。逆に言えば山ではそうした小さな怠慢からほつれが広がっていく。不確実性を出来るだけ排除し確実性を積み重ねていくことが力になり行動の幅を広げる。僕らは自然との関係を密にするために山に入るのであって危険やスリルを求めて山に行くわけじゃない。少なくとも僕はそう思う。もちろん山は多くの不確実性を内含しているけど、その不確実性に対して妙な付加価値を意識することは自然を見る眼を鈍らせることになるのではないだろうか。 精神の状態はまた体力の消耗にも大きく関わるように感じた。前回の涸沢岳西尾根は初日急登ラッセル10時間、3時間睡眠を経て2日目15時間行動だったがまだまだ動ける感じだった。でも今回は17時間半行動とはいえ比べ物にならないほど疲弊した。小同心クラックから大同心稜まで続いた強い緊張感と不安によるものだと思う。ネガティヴな想定は客観的に、ポジティヴなイメージは主観的に。クライミングで学んだことだ。これも全然できてなかった。冷静さを見失わないことを常に意識にしなければいけない。そしてそれから無尽蔵の体力を身に付ける。これが一番大事。 個人的なことも長々と書いてしまったけど、少しでも誰かの参考になればと思います。それから、写真はほとんどうっちーが撮ってくれました。うっちーが写っている写真がなくてファンクラブの人には申し訳ないです。ごめんなさい。 僕らが下降したと思われるルート
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by tmualpine
| 2019-02-05 21:19
| アルパイン
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