人気ブログランキング | 話題のタグを見る
excitemusic
ICELANDia
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
TMUAC 首都大山岳部とは
創部1950年
山岳部では縦走・クライミング・沢登り・雪山など四季を通じて様々な活動をしています。
カテゴリ
検索
最新の記事
20251230-20260..
at 2026-01-30 17:20
20251208赤岳沢−奥壁
at 2025-12-29 20:20
20251213-14 谷川..
at 2025-12-20 17:11
20251108-09小川山..
at 2025-12-15 13:33
20251110稲子岳南壁
at 2025-11-21 23:10
以前の記事
カレンダー
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


もう一つの修論

「20分ボルダー丸岩における課題分解問題について」
     首都大学東京山岳部福岡出張所主任 池上


序文
 かねてより問題にされてきた20分ボルダー最難プロジェクトの一つ、丸岩直登が、2010年2月14日に解決した。ここにその経緯と今後の課題について述べる。

経緯
 このボルダーを発見したのは2008年6月であった(記事08/6/6参照)。
もう一つの修論_e0009437_2104036.jpg

この時はまだ悪条件ランディングでのスポッター無しクライムに慣れておらず、スタンディングスタートにぶら下がっただけでシットは試されなかった。写真で使用しているホールドは後述するトラバースのキーホールド(右)と縦の大ガバ(左)である。
 初めて課題としてシットからトライされたのは同年8月31日である。
もう一つの修論_e0009437_2183362.jpg

探検部の長瀬、福田と訪れた際に一手目を探すも、
「無理じゃね?」
ということで右へトラバース後の直登課題が設定されたのである(当日中にそのムーブはほぼ完成するも、その完登報告は09/2/9まで待つことになる)。また写真で取ろうとしているホールドは極小カチであり、結局スタートホールドを離した際の振られに耐え得るような代物ではなかった。
 その後数多くのトライが重ねられるも、既登かどうかすら分からないラインに可能性を見ることは難しかった。しかし、極小カチのさらに右にかろうじて止まるピンチが発見され、そこを保持しての左手一手目が止まった(記事09/3/12参照)ことによりこの課題は突然現実味を帯びることになる(ここでピンチの発見と左一手目にもしばらくの期間を挟んでいること、その後の右一手もなかなか止まらず記事にあるような核心の終わりではなかったことには言及する必要があろう)。しかしそれは既存のトラバース課題とのライン分解という問題に悩む日々の始まりでもあった。

分解問題
 まずは、完登ムーブを示す。ただし、完登動画は撮れなかったために編集動画であることに注意。完登時のマット配置は後半と同一である。


 下図はトラバース後直登課題と直登課題の使用ホールドをそれぞれ赤と緑で示したものである(共通であるスタートは水色、黄は後述)。
もう一つの修論_e0009437_2235247.jpg
緑の右手三手目に注目されたい。これはトラバース課題のホールドと重複している。このホールドはトラバース課題においてトラバースから直登へと動きが変化する最初のキーとなるホールドである。かなり保持し易くもあり、ここを取ると体を右へずらして既存のトラバース課題に合流できてしまう。直登課題としては左の大きな縦ガバ(えぐれてはいないので形状的にはカンテとでも言うべきか)に沿っていたいとするのは自然であろう。トラバース課題と完全に分離させようとすると、二つの重複ホールドの代替案として黄色のホールドがあるのだが、一つ目は向きの良くない極薄のフレークカチで全く止めることが出来なかった。よしんばそれが取れたとしても、二つ目の重複ホールドの代わりとなる黄色ホールドもかなり小さいカチであり、ムーブの後半、スポッター無しで取りにいくのはかなり怖い。全体的に一段階は難度が上がるかと思われる。現在の自分の力量ではそこまでこだわることは出来ないと判断し、重複ホールドを使用して完登とした。
 最後に、解決の糸口となったピンチと、その持ち方を示す。

ピンチ
もう一つの修論_e0009437_2336407.jpg
持ち方:親指と小指がカチ、中三本がスローパー。
もう一つの修論_e0009437_23581058.jpg
ハングでこのホールドはやはり厳しく、動画中に見られる右足、左足のトゥフックが陰の核心となっている。

グレーディングについて
 一般にグレーディングはホールドが確定した後のムーブの難度で評価されていると思う。そうでなければ再登者との整合性が計れないからである。それにならうとこの課題は初段はあるといえる。数は少ないが著者が落としたどの初段課題より難しかったのだが、著者に二段完登の経験が無いためそれ以上のグレーディングはできない。再登者によるグレード確認が待たれる。
 今回は高難度のプロジェクト作成とその完登という貴重な体験ができた。特にホールドの特定と吟味は非常に大変であったがその試行錯誤がまた充実した時間でもあった。この時間がグレーディングによってスッパリと消えてしまうのは寂しくもある。
「完登までのすばらしい体験を、グレードという味気ない数字で汚したくない」(某クライマー)
という言葉が実感された。

今後の課題
 やはり2課題の完全な分離であろう。ここではある程度長い課題でカチに飛びつき続けるカチ持久力とでも言うべき能力が求められているように思う。また、ランディングへの慣れも時間と共に薄れていくことに注意したい。
 残された課題はフェイス岩の左手スタート右手直リッププロジェクトを含め二つであり、解決が期待される。
by tmualpine | 2010-02-15 00:13 | ボルダー
<< 仙丈・甲斐駒 昨日修論発表終わったぜー! >>