もう一つの修論 |
「20分ボルダー丸岩における課題分解問題について」 首都大学東京山岳部福岡出張所主任 池上 序文 かねてより問題にされてきた20分ボルダー最難プロジェクトの一つ、丸岩直登が、2010年2月14日に解決した。ここにその経緯と今後の課題について述べる。 経緯 このボルダーを発見したのは2008年6月であった(記事08/6/6参照)。 ![]() この時はまだ悪条件ランディングでのスポッター無しクライムに慣れておらず、スタンディングスタートにぶら下がっただけでシットは試されなかった。写真で使用しているホールドは後述するトラバースのキーホールド(右)と縦の大ガバ(左)である。 初めて課題としてシットからトライされたのは同年8月31日である。 ![]() 探検部の長瀬、福田と訪れた際に一手目を探すも、 「無理じゃね?」 ということで右へトラバース後の直登課題が設定されたのである(当日中にそのムーブはほぼ完成するも、その完登報告は09/2/9まで待つことになる)。また写真で取ろうとしているホールドは極小カチであり、結局スタートホールドを離した際の振られに耐え得るような代物ではなかった。 その後数多くのトライが重ねられるも、既登かどうかすら分からないラインに可能性を見ることは難しかった。しかし、極小カチのさらに右にかろうじて止まるピンチが発見され、そこを保持しての左手一手目が止まった(記事09/3/12参照)ことによりこの課題は突然現実味を帯びることになる(ここでピンチの発見と左一手目にもしばらくの期間を挟んでいること、その後の右一手もなかなか止まらず記事にあるような核心の終わりではなかったことには言及する必要があろう)。しかしそれは既存のトラバース課題とのライン分解という問題に悩む日々の始まりでもあった。 分解問題 まずは、完登ムーブを示す。ただし、完登動画は撮れなかったために編集動画であることに注意。完登時のマット配置は後半と同一である。 下図はトラバース後直登課題と直登課題の使用ホールドをそれぞれ赤と緑で示したものである(共通であるスタートは水色、黄は後述)。 ![]() 最後に、解決の糸口となったピンチと、その持ち方を示す。 ピンチ ![]() ![]() グレーディングについて 一般にグレーディングはホールドが確定した後のムーブの難度で評価されていると思う。そうでなければ再登者との整合性が計れないからである。それにならうとこの課題は初段はあるといえる。数は少ないが著者が落としたどの初段課題より難しかったのだが、著者に二段完登の経験が無いためそれ以上のグレーディングはできない。再登者によるグレード確認が待たれる。 今回は高難度のプロジェクト作成とその完登という貴重な体験ができた。特にホールドの特定と吟味は非常に大変であったがその試行錯誤がまた充実した時間でもあった。この時間がグレーディングによってスッパリと消えてしまうのは寂しくもある。 「完登までのすばらしい体験を、グレードという味気ない数字で汚したくない」(某クライマー) という言葉が実感された。 今後の課題 やはり2課題の完全な分離であろう。ここではある程度長い課題でカチに飛びつき続けるカチ持久力とでも言うべき能力が求められているように思う。また、ランディングへの慣れも時間と共に薄れていくことに注意したい。 残された課題はフェイス岩の左手スタート右手直リッププロジェクトを含め二つであり、解決が期待される。 |
by tmualpine
| 2010-02-15 00:13
| ボルダー
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